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なぜクロムめっきは錆びるの? ——「クロムは錆びないのに、なぜか錆びて見える」ひみつ

クロムめっきはピカピカで、とても強そうに見えます。 実際クロムは、錆びにくい金属です。 でも、クロムめっきをした製品でも錆びてしまうように見えることがある。 「クロムは錆びないのに、なんで?」 そんな疑問を、仕事をしていて何度も受けてきました。 だから今回は、僕らなりの言葉で、できるだけ丁寧に説明し…

なぜクロムめっきは錆びるの? ——「クロムは錆びないのに、なぜか錆びて見える」ひみつ

クロムめっきはピカピカで、とても強そうに見えます。

実際クロムは、錆びにくい金属です。

でも、クロムめっきをした製品でも錆びてしまうように見えることがある。

「クロムは錆びないのに、なんで?」

そんな疑問を、仕事をしていて何度も受けてきました。
だから今回は、僕らなりの言葉で、できるだけ丁寧に説明しようと思います。

錆びているのは、クロムじゃない

クロムめっきの断面には、三つの層があります。
表面から順に——クロム、ニッケル、そして鉄(材料本体)。

この三層が、静かに重なっている。

一番錆びにくいのはクロム。次にニッケル。
そして一番錆びやすいのが、いちばん下の鉄です。

つまり——錆びているのは、クロムではありません。

その下に眠るニッケルや鉄が、先に反応している。

これが、最初に知っておくべきことです。

クロムの表面には"見えないひび"がある

クロムの皮膜は、とても硬い。

その硬さゆえに、めっきされた瞬間から内部に強い応力を抱えます。
そしてその応力が、表面に細かなひびを生む——
マイクロクラックと呼ばれる、肉眼では見えない傷です。

顕微鏡で見ると、乾いた大地のひび割れのように、無数の細かな線が広がっています。

このひびが、水や湿気の入り口になる。

ここが、錆びの連鎖の始まりです。

電位差が、小さな"電池反応"をつくる

金属にはそれぞれ、「錆びやすさ」を示す電位があります。
鉄 → ニッケル → クロム、この順に錆びやすい。

クラックに水が入り込んだとき、この"錆びやすさの差"が働きます。

まるで小さな電池のように、金属間で電気的な反応が起きる。

その結果、クロムより先にニッケルや鉄が腐食していく。

これが、表面に見える変化の正体です。

下の金属が膨らんで、クロムを押し上げる

下地の金属が錆びると、体積がわずかに膨らみます。

その膨らみが、上にあるクロムをぐいっと押し上げる。
白い点、ブツブツ、浮き、剥がれ——
そういった「錆びて見える現象」は、実はこの押し上げによるものです。

クロムが錆びているのではなく、下の金属が錆びた変化を、クロムが表面で教えてくれている。

そう思うと、少し見え方が変わりませんか。

六価クロム浴の場合——"残液"という、もう一つの問題

前回のコラムでも触れましたが、六価クロム浴には少し特有の注意点があります。

深い穴、盲穴、水が抜けにくい複雑形状——そういった箇所に、六価クロムの液が残ることがある。
皮膜が六価になるのではなく、"液が残るだけ"です。
でもその残った液は酸性で、下地の腐食を早めてしまうことがある。

形状の複雑な製品を扱うとき、僕らが特に気にかけているのは、ここです。

クラックは調整できる。でも装飾クロムでは、あまり意味がない

専門的には、電流や温度を変えることでクラックの密度を調整することができます。

でも、装飾クロム(ニッケルクロム)においては、その調整にあまり意味がない。
なぜなら、装飾めっきの耐食性を決めているのは、クロム層ではなく——
ニッケル層の構造だからです。

半光沢ニッケル・光沢ニッケル・ダブルニッケル・バリアニッケル。
こうしたニッケルの組み合わせ方こそが、外装の耐久性の"本体"なのです。

だから僕らは、クラック調整よりも、その下のニッケル設計に真剣になります。

クロムは錆びない。でも「下の金属」は錆びる

クロムめっきが錆びて見える仕組みは、じつはとてもシンプルです。

クロムの表面には見えないひびがある。そこから水や塩が入る。
下のニッケルや鉄が電位差で先に錆びる。そのサビが膨らんで、クロムを押し上げる。

つまり、クロムは錆びていない——"下の金属が錆びた変化を、表面が静かに教えてくれている"だけ。

このしくみを知ると、めっき製品の見え方が少し変わるかもしれません。
そしてそれが、僕らの仕事をより深く理解してもらえる、最初の一歩だと思っています。

クロムめっきのことで気になることがあれば、いつでもご相談ください。
錆びの原因から、皮膜の設計まで、一緒に考えさせてください。

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